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chapter8.記憶のマリンスノー

Bysasa





前回までのあらすじ


元戦士ギルドの傭兵、ゾハル・マーベリック。

彼は長年コロール近郊の名家、チャールベルグ家の護衛として穏やかな日々を過ごしていた。



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しかし、穏やかな生活は続かなかった。

暗躍するある組織に目を付けられた名家は突然の終わりを迎える。



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その組織は悪名高いブラックウッド団とも繋がっており、
そこで捕らえられたゾハルは人体実験のサンプルとして、ヒストの樹液を体内に取り込まれ続けた。



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運良く脱出し、生き延びたチャールベルグ家のお嬢様を奴隷港にて救出したゾハルだったが、
その先で度重なる強敵との対峙が待っていた。



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そして彼と同行するのは元お嬢様のリノン・チャールベルグ。

家族を失い、奴隷として売り飛ばされた所を傭兵のゾハルに救われた。



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その後、彼らは奴隷港で知り合った友人や奴隷たち、
そして自分たちが外の世界に脱出するため、レジスタンス軍へ加担することとなった。



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友人となった今は亡きアレクセイに、レジスタンスのリーダーを任されたのが...

飲用し続けたヒストの樹液は、着々と彼の体を蝕み、遂には眠りから覚めない状態となってしまう。

迫る決戦の日まで彼は目を覚まし、無事に奴隷港を救うことができるのだろうかーーー










第1節「物書きのササーニア/晩餐」


緑溢れるシロディール地方の"掃き溜め"と呼ばれるブラヴィルの街。
街は貧困、飢饉、物乞いが溢れ、疫病、伝染病が蔓延している。



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それでも上層部はまだマシだった。秘密裏に存在する地下の奴隷港区よりは。



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読んで字のごとく、奴隷港はシロディールの裏の世界で蔓延している奴隷ビジネスのメッカ。



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奴隷港では今日も様々な奴隷達の購買、調教が行われ、数々の命が冒涜されている。



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そして私はここシロディール地方では少しばかり名の売れた小説家だ。

ゾハル・マーベリックという男を追って、ここブラヴィルの奴隷港にやってきた。



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彼は戦士ギルドの元エース、口数は少ないが正義感が強く、数々の輝かしい功績を残した。

さらには皮肉にも実の父だった賞金首のアザニ・ブラックハートを打ち取った事で、
彼の名はシロディールに響き渡ることとなった。



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当時ゾハルを英雄視する声は決して少なくなかった。ある事件を起こすまでは。

戦士ギルドの一員だった彼は、理由は分からないが、突然ギルドを辞め、悪名高いブラックウッド傭兵団へ移籍した。

そしておそらくそのすぐ後のことだろう。私は物乞いから信じられない話を耳にした。

彼は任務の一環で、ある小さな村の住人たちを一晩で惨殺し、煙の様に姿を消したというのだ。



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日の当たる道を歩いていた彼はの人生は一転、多額の賞金が掛けられ追われる身分となる。

私の目標は彼の半生を著書として執筆することだ。だって興味があるじゃないか。

---どんな風に彼が堕ちて行ったのか---

物乞いに大金を払い、ようやくゾハル・マーベリックの足取りが掴めたが、彼は昏睡状態。
苦しくも私は強面のオークにつまみ出された。

ようやく真実を聞けると思ったのだが、どうやら今しばらく目を覚ます様子はないようだ。

タイミング良く、私はここ奴隷港を牛耳る悪名高い兄弟からディナーの誘いを受けた。

殺される心配?それはおそらく大丈夫だろう。彼等にも私の書籍の印税が渡っているから。

悪事に加担し人の心はないのかって?悪いが私は俗世の感情などに興味はない。
面白いネタが仕入れられるなら他は"どうでもいい"のだ。

私は腕っぷしは強そうだが、頭が悪そうなガジートに通され、彼等の根城である奴隷港の闘技場を訪れた。



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ボスのセニョーン「久しぶりだな先生。相変わらず趣味の悪い被り物をしている」



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物書きのササーニア「褒め言葉ですよ。ありがとう。伝染病でね。とても状態が酷く、人に見せられたものではないので」

ボスのタラース「ブヒヒッ、僕は隠される方が"ソソる"かなぁ。あ!!兄さん、そのお肉食べてもいいッ?」

ボスのセニョーン「少しは遠慮しろ。そんなんだから肥えるんだぞ豚めッ!!」

ボスのタラース「ひッツ!!ごめんよ兄さん...」

物書きのササーニア「まぁまぁ、それでこの料理、なんだか指のようなものがみえるけど」



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ボスのセニョーン「ボブマーの珍料理"アンスラッパ"だ。なかなかあり付ける料理ではないぞ。ここでは材料に困らないからな。クックック...」

ボスのタラース「その指をしゃぶるのがサイコーなんだよ!ブヒヒヒッツ!!」

彼等が舌鼓を打つのは何を隠そう人肉料理。
さすがの私でもこれには食欲が湧かないが、兄のセニョーンの機嫌を損なえば私とて殺されるかも知れない。

口にいれた瞬間になんとも言えない臭みが口の中いっぱいに広がる。
遂にはカニバリストの第一歩を踏み出したワケだが、本にしても絶対に売れないだろう。

物書きのササーニア「うむ、変わった味だけど、悪くない。感謝するよ」

ボスのセニョーン「さすがは先生。どこぞの惨殺犯とは舌が違う」

物書きのササーニア「ああ、今上で話題のウォーダーズエッジの惨殺犯だね。私も会ってみたいものだ」

ボスのセニョーン「またまた先生...さっきまでその男の所にいただろう。

物書きのササーニア「い...いや、あれは...」

ボスのセニョーン「この私に...嘘は...ダメだよなアアアアッ!!」

そうすると、足置きにしていた奴隷を手持ちの剣で豪快に頭から突き刺すセニョーン。
断末魔の叫びと血しぶきが辺りに飛び散る。



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凍り付くような微笑みに額から冷や汗が流れるのを感じた。目の前の料理になるのは次は私かも知れない。

物書きのササーニア「そ、そうだった。興味本位でね。でも彼は君たちの指揮下にあるのだろう?」

ボスのセニョーン「...冗談だよ先生。あいつは形こそオレたちに協力してはいるが、根っからの傭兵だ。飼い慣らせはしないだろう。それにもう使い物にならないらしいから捨て置けばいい」

ボスのタラース「でもあいつの連れの奴隷はキュートだったよね。そろそろ頃合いだから横取りしてやろう。ぼくの‘’おもちゃ‘’のひとつに加えるんだ...ブヒヒヒッ!!」

いつまでも寝ている余裕はなさそうだよ。ゾハル・マーベリック。









第2節「リノン・チャールベルグ/奮闘」


光の刺さない奴隷港の病棟。今日もわたしはひとり目を覚ました。
満身創痍で運ばれたわたしの傷は、燻りの魔女と呼ばれていたアメリの魔術によりほとんど回復した。

レジスタンスの元リーダーで友人だった今は亡きアレクセイ。彼が命を掛けた奴隷港奪還作戦の日は残す所数日。

しかしおじさんは眠りについたまま。未だ目覚めない新リーダーに誰もが焦りの表情を浮かべている。

魔女アメリ「お待たせしたかしら?準備できたわ」

リノン嬢「アメリ...ごめんなさい無理言って」

魔女アメリ「あなたたちには私も借りがあるし、構わないわ。それよりなんて顔してるの」

リノン嬢「え?どんな顔してた?」



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魔女アメリ「...あなた、この世の終わりみたいな顔しているわよ」

アメリに言われるまで全く分からなかった。冷静を装うというのは思った以上に難しい。

そして話は数時間前に遡る。



魔女アメリ「精神領域への干渉?」

リノン嬢「うん、このままじゃおじさん、ずっと起きないかも知れないから」



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アメリは2つの人格を持つ魔女。
膨大な魔力の枯渇により、幸い現在は悪人の方の人格は影を潜めている。

彼女たちグレンモリルの魔術なら、おじさんが苦しんでいるヒストの樹液の副作用も抑えることができるかも知れない。



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魔女アメリ「すっかり私を信用しているようだけど、忘れたのかしら?私は災厄の魔女と呼ばれた女よ」

リノン嬢「もう、そんなカッコ付けなくてもいいから」

魔女アメリ「...やりづらいわね。ただグレンモリルの魔女も万能ではないわ。ましてや私は駆け出し。必ずここに帰れる保証はないわ」



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リノン嬢「大丈夫。信じてるよアメリ」

レジスタンスのコリン「あんた気を許しちゃいけないよ。私の仲間が何人こいつに焼かれたと思ってるんだ。これで恩を売るなんて思わないことね。いつだってあんたの首を狙ってるから」

リノン嬢「アメリは...」

魔女アメリ「ええ。自分が行った事に対する罰は受けるつもりよ。ただ今は黙っていて」

レジスタンスのコリン「チッ...善人ぶりやがって...まるで私が悪者じゃないのさ。リノンに何かあったらすぐに首を刎ねてやるからな!!」

魔女アメリ「...リノン、あなたはこれを飲んで」

リノン嬢「これはなぁに?」

魔女アメリ「スクゥーマ・ベルモット。ムーンシュガーにニガヨモギを配合してるから、中毒性は少ないわ。ただ...耐えらない程マズイらしいけど」

オークのセルゲイ「キツイぞ?覚悟はいいのか?」



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わたしは躊躇うことなく、スクゥーマ・ベルベットの瓶を開けた。
苦い飲み物は好きではないが、今はこのやり方以外頼れるものがない。

キュポンと蓋を開けると周りの人たちの顔色が一斉に曇り、強烈な刺激臭が辺りに立ち込めた。

魔女アメリ「ひと口でいいわ。強烈な目眩に襲われるけど、そのまま眠って大丈夫。その状態であなたに魂縛の魔法を掛けて、傭兵の精神世界に飛ばす。覚悟はいい?」

リノン嬢「うん。じゃあ...飲むよ?」

魔女アメリ「それと覚えておいて、夢の世界とはいえ現実より安全なんてことはないから。そこで死ねば魂縛も消える。死んでも責任は持てないから」

レジスタンスのコリン「てめぇふざけんなッ!!」

リノン嬢「大丈夫だよコリン、ありがとう。絶対におじさんを連れて帰るから」

わたしは鼻を摘んでそのスクゥーマ・ベルモットを一気に飲み干した。

すると今まで経験した事のない強烈な喉の痛みと強烈な視界の歪みに覆われ、次第に意識が薄れていった。



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傭兵のゾハル「...リノン...おい、リノン」

懐かしい声が聞こえた気がしてわたしは目を覚ました。

目覚めるとそこは雑多に散らばった部屋。見たこともないような毒草や菌類。

腐臭のする胞子がボフッと音を立てて舞い上がると、ここが現実世界ではないことに気が付く。



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まるで家主の死後数百年でも経過した様な部屋だ。お世辞にもここには住める気がしない。

リノン嬢「これが...おじさんの世界...」



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そう、わたしは気がついていた。
誰より一緒にいるのに、この人の穢れた部分から目を背けていた。

ここ奴隷港で再会した時も、彼の尋常ではない様相の変化に、離れていた間に何があったのか聞けなかった。

真実を知るのが怖かった。わたしは結局のところ、おじさんを知らないのだ。

だけどもうあの頃のわたしじゃない。
目を逸らさないと決めた。この人から。もう2度と。



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狭い部屋を執拗に散策する間もなく、見慣れた男の姿を見つけることができた。



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リノン嬢「おじさん...!おじさんッ!!」

わたしは迷う事なく、駆け寄る。

しかし、彼が伏せる床は観音開きの扉になっており、ギィィィ...と鈍い音を立てその扉が開くと、
彼の身体は真っ逆さまに虚空へと消えて行った。

リノン嬢「ま...待って!!行かないでっ!!」



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呆然とする私の頭の中に、また聞き慣れた低い声が響く。

傭兵のゾハルの声「どうして来たんだ?そこを"落りたら"もう戻る...はでき...な...今な...まだ間に...あ...」

声は次第に小さくなっていく。数日ぶりだが、懐かしい声に涙が出そうになった。
どうやらおじさんはここから先へ進むのを静止したい様だ。

リノン嬢「...わたしが諦めが悪いの知ってるでしょ」

よし、と小さくガッツポーズをし、頬をバシッバシッと叩く。
足元にみえる深い穴は底が見えない。落下した先が岩場だったら間違いなく死ぬだろう。



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---精神世界で死ねば魂縛も消える---

アメリの忠告を思い出して、足の震えが止まらなくなった...怖い。



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でもわたしがここで諦めたら、2度とおじさんと向き合うことはできないだろう。

リノン嬢「ビビるなわたしッ!ここまでだって乗り越えて来たんだからっ!!...それッ!!」

出来るだけ壁面を避けて穴の中心へ飛び込む。階段を転がり落ちる、いう感覚とは違った。

重力に何一つ逆えず、光の見えない空間を深く深く、真っ逆さまに落ちていく。

どれくらいの速度なのかも分からない。次第に感覚を失って行く。

もはや落ちているのか、登っているのかも分からなくなっていた。



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しばらくすると、今度はより鮮明におじさんの声が頭の中に響き渡る。

傭兵のゾハル「...やっぱり来たのか」

リノン嬢「分かってたでしょ。わたしは諦めが悪いの」

傭兵のゾハル「どうして追いかけて来た。忠告したはずだ」

リノン嬢「わたしはおじさんと向かい合いたいの。だから今度は聞かせて欲しい」

傭兵のゾハル「...おまえが知らないことを、か」

リノン嬢「うん、わたしが目を背けたこと。ぜんぶ知りたいの」

おじさんの声は一瞬戸惑ったように取れたが、やがて彼の口から彼の壮絶な人生が語られた。

母親を手に掛けた父親に復讐するために戦士ギルドへ入ったこと。そして父親の命を奪ったこと。

潜入捜査でヒストの樹液の幻影により、慕っていた無実の村の人々の命を奪ったこと。



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その間に自分を慕っていた戦士ギルドマスターの息子が殺されてしまったこと。

その後、ブラックウッド傭兵団の罠に掛けられ、監禁された後、ヒストの樹液を培養した装置に沈められ、
人体実験のモルモットとされたこと。



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頭髪は老人の様に色褪せ、健康的だった焼けた肌は色を失い、美しかった翡翠色の瞳はまるで爬虫類の様な瞳になったこと。

傭兵のゾハル「...これがおまえの知りたがってるオレの半生だ。とんだ英雄譚だろう」

リノン嬢「...」

想像をはるかに超えた彼の人生の残酷さに対し、まるで自分が一番の被害者のような気分でいたのを心から恥じた。

そして初めて知った気がしたのだ。ゾハル・マーベリックという男を。

わたしの瞼からはボロボロと涙が流れ出ていた。こんなにも報われない話があるのだろうか。



ツバシャァァアアアアァァァアンッ!!




突然の着水に思わず大量に水を飲み込んで溺れそうになった。

咳き込みながら水面に浮上しようとするわたしの腕には、何かが絡まりつき思わず声を上げてしまう。

リノン嬢「...ヒッ!!」

目に映ったのは、無数の死体。死体。死体...。

そして暗闇に映る見渡す限りの赤。まるで血のような黒ずんだ赤い湖。



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どの死体も腐食し、赤黒く変色し限界を留めてはいない。きっと...おじさんが手に掛けた人々が形を成したものなのだろう。

浄化の魔法が使えれば彼らを安らかな眠りに導くことができたのだろうか。

辺りは薄暗く、辛うじて周囲が見渡せる程度の暗闇の世界。

湖から這い出た後、わたしは乾きそうもない防具の革のパーツを脱ぎ捨て、杖だけを抱え、
もつれた脚でわたしは必死におじさんを探す。



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そうしてようやく岸辺でうずくまる、おじさんの面影を持つ少年をみつけた。

リノン嬢「...や...やっと...みつけた...きみは...おじさん...?だよね?」

頬は痩け、身体中アザだらけ。右肩の関節は外れ、明らかに何かに暴行を受けている様子が見て取れる。



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少年ゾハル「...来ちゃったんだね」

リノン嬢「どうしてそんなに小さくなっちゃったの?」

少年ゾハル「さぁ?僕が一番幸せだった頃だったから、だと思う」

リノン嬢「おじさんは...ずっとここに閉じこもってるつもり?」

少年ゾハル「...僕はここで罰を受けなきゃダメなんだ。それに今すぐに逃げた方がいい。"奴ら"はお姉ちゃんじゃ止めることはできない」

ガキン!ゴガンッ!!ガキン!ガキン!ゴガンッ!!

遠くから鉄と鉄を打ち付けるような轟音が聞こえてくる。
おじさん曰く、赤子と呼ばれる死者の魂魄が具現化した魔物が罰を与えにやってくるらしい。

リノン嬢「おじさんは...ここでその赤子から何度も暴行を受けているの?」

少年ゾハル「そうだよ。これが僕の罰。奴らは死なない。永遠に繰り返される」

震えている少年の頭を撫でる。この人なりの罪滅ぼしなのかもしれないが...

これからわたしはこの人に酷いことを言わなければならない。わたしはもう目を背けないと決めたのだから。

リノン嬢「ねぇ、聞いて...それはあなたの...自己満だよ」



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少年ゾハル「...酷いこと言うんだね、お姉ちゃん」

リノン嬢「あなたがどれだけ自分を戒めても、死んだ人は生き返らない。お父様、お母様、セルゲイの弟だってそうだったでしょ」

少年ゾハル「...分かってる。それでも自分がして来たことを受け止める事ができないんだ!!ぼくには耐えられないッ!!」

リノン嬢「耐えられないなら、その重荷をわたしにわけてほしい。一緒に探そうよ。罪を償う方法を」

少年ゾハル「償える...のかな」



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リノン嬢「死んだ人は戻らない。でもおじさんが救える命もたくさんあるよ」

少年ゾハル「そう...だよね。こんなんじゃアレクセイに顔向けできないや」

初めて感情を露わにした少年は大粒の涙を拭っている。ずっと誰にも言えずひとりで押し殺して来たのだろう。
あの頃のわたしのように。

少年ゾハル「キミを案内したい。僕の"最深層"に。でも僕の身体はもうマトモに動かせる状態じゃないんだ」

そうだ、今度はわたしが彼を助ける番だ。

リノン嬢「...はい乗って」



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少年ゾハル「なんのつもり?」

リノン嬢「なにって、おんぶ。おじさんもご両親にしてもらったことあるでしょ」

少年ゾハル「いや、そういう話じゃなくて。お姉ちゃんが僕をおぶって赤子から逃げ切れるとは思えない」

ガキン!ガキン!ガガキン!!ガキン!!

少年ゾハル「聞こえてる?赤子たちがもう近くまで奴らが来てる!!僕が時間を稼ぐから早く逃げて!!」

リノン嬢「いいから早く乗ってッ!!あなたが乗るまでわたしはここを動かないから!!」

少年ゾハル「わ...分かったよ。そう言い出したらテコでも動かないんだし」

精神世界とは言え、現実的と同じように体力は消費する。彼を担いで長時間逃げ回るのは確かに現実的ではない。

赤子と呼ぶ相手がどんな敵なのかは分からないが、わたしは戦闘が得意ではない。
肉弾戦はなおさらだ。短期勝負。なんとか逃げ切るしかない。

リノン嬢「もっとしっかり捕まって!!走るよッツ!!」



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足元は赤色の水で足の付け根くらいまで埋まっており、舗装された道ではない為、
思った以上にスムーズに走る事ができない。

バシャ!バシャ!バッシャッ!!

ガキン!ガキン!ガガキン!!ガガンガン!!

少年ゾハル「お姉ちゃん!!すぐ後ろに来てるッ!!僕を降ろしてッ!!」

リノン嬢「いいから喋らないでッ!!舌噛むから!!」



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砦の中の水路を1kmくらいは走っただろうか。奇跡的に追跡は振り切れたようだ。

赤子達の足音は次第に小さくなり、わたし達は少し休憩することにした。

リノン嬢「...ふぅ...ふぅ...はぁ...あはは、もう少し運動スキルの訓...練して...貰えば良かったかな」

少年ゾハル「そこで少し休もう。もう少しで出口だよ」

リノン嬢「ほんとぉ?外れてたらおこるからね!...ふぅ...」

精一杯微笑んではみせたが、少年とはいえ、男性をおぶりながら走るというのは思った以上に辛かった。
だけど、ここで諦めるワケにはいかない。

ずっと気を張っていたからだろうか。最悪なことに少し気を抜いた瞬間、わたしたちは浅い眠りに落ちてしまった。

どれくらい眠っていたのだろうか?震えながらわたしの肩を揺さぶるおじさんの声でハッと目を覚ます。

少年ゾハル「...ちゃん!?お姉ちゃん!!」

異様なまでに発達した筋肉、皮を縫い合わせた様な表情、金属音を放つグリーブの正体、これが‘’赤子‘’だ。
この巨躯から繰り出される一撃はわたしにはとても耐えられそうにない。

完全に油断したわたし達は遂に‘’赤子‘’に取り囲まれてしまった。



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ゴオオッ!!

風切音と共に、拳がおじさんに向かって振り下ろされる。が、間一髪でこれをかわし、おじさんは私の手を取る。

少年ゾハル「お姉ちゃんッ!!動ける!?」

リノン嬢「大丈夫ッ!!乗って!!」

すぐさま向きを変え、わたしは彼をおぶって再び駆けだした。
だが、思った以上に不安が脚に来ており、しばらくするとマトモに走ることができなくなった。

バシャ!バシャ!バッシャッ!!バシャァアァン...!!

リノン嬢「ご...ごめん」

少年ゾハル「もうお姉ちゃん限界だよ。お願い、僕をおいて逃げて」

リノン嬢「...ううん、絶対に諦めない"今度"は私が守るから」

それから私たちは最後の力を振り絞り、砦の出口にたどり着いた。
その先には一面の青い海原が広がっていた。



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リノン嬢「ねえ、おじさん、これから...あれ?おじさん?」

---後はお姉ちゃんに任せたよ。僕はその海の底に沈んでいるから---








第3節「サーリア・チャールベルグ夫人/コロールの人々」


私の名前はサーリア・チャールベルグ。さっきまで奮闘していたリノンの実の母親。

これは私の記憶の話。現在より数年前、まだ私が殺されてしまう前の話。

私はコロール近郊の名家に産まれ、ひょんな出会いから戦士ギルドのゾハル・マーベリックという男を愛した。



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しかし、思いむなしく、階級差というものに阻まれ、私たちの関係は終わりを迎えた。
もはや彼とは2度と出会うことなどないと思っていた。

そして私はその寂しさを埋めるため、両親の紹介ですぐに資産家のノルマンという男と政略結婚をした。



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ノルマンは多少変わり者ではあったが、近郊のコロールという街は緑に溢れ、
戦士ギルドの本拠地が存在するため、治安も良く、帝都から移り住む人たちも少なくない。



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娘を授かったことが分かったのは、結婚してすぐのことだった。

更に待っていたのは"元彼だった"ゾハルとの再会。これも今思えば運命の導きだったのだろう。

ノルマンはコロール近郊に住んでいた"元一般人"しかし彼には人一倍の商才と才能を見抜く力があった。

たまたま目を付け、契約した錬金術師が作った""簡易錬金道具"の評判が良く、
その売り上げのおかげで、彼の代で貴族と呼ばれるまでになった。



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だが彼女は、ごく稀にラボを吹き飛ばすらしい。今回の様に。

ノルマン・チャールベルク伯爵「サーリア、ちょっと一緒に来てくれるかい?」

サーリア夫人「かまわないけど...もしかしてまた?」

ノルマン・チャールベルク伯爵「ああ。また錬金術の実験室が爆発したらしい」

その錬金術師は自由奔放で勢い勝負。性格には多少問題あるが、
それを十分に補う程の腕と周囲からの信頼、そして美貌を兼ね備えていた。

ノルマン・チャールベルク伯爵「...ゲホッ...ゲホ...イルーシア...生きているかい?」

錬金術師イルーシア「ごめんなさい伯爵。またやっちゃったわ」

ノルマン・チャールベルク伯爵「はぁ...キミの腕は買っているが、もう少し慎重にできないかな?」

錬金術師イルーシア「で...でも科学の進歩に失敗はつきものでしょう!?でも心配いらないわ。レシピは無事よ!!」



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サーリア夫人「ふふふ...面白い方ね」

ノルマン・チャールベルク伯爵「笑いごとじゃないよサーリア...それで今度はいったいどんな薬を作っていたんだい?」

錬金術師イルーシア「私たち魔術師は非力じゃない?到底戦士には太刀打ちできない。そこでこいつよ!!」

彼女は大きな目を輝かせレシピを私に見せていた。薬学の知識はある程度備えてるつもりだが、
イルーシアが得意げにみせてきたレシピは、複雑すぎて私には全く理解できなかった。

ノルマン・チャールベルク伯爵「申し訳ないが、私にも全く理解できない」

錬金術師イルーシア「激昂魔法のポーション。これで戦士とも対等に渡り合えるでしょ」

ノルマン・チャールベルク伯爵「...ちなみにその薬を使えば僕でも戦士並みに戦うことができるのかな?」

錬金術師イルーシア「激昂魔法は自分で制御できる魔法ではないわ。対象を強制的に戦闘状態にし、敵味方関係なく無差別に攻撃させるバーサーカーと化す魔法よ」

ノルマン・チャールベルク伯爵「それではリスクが大きいな...実際自分で狂戦士化するなんて危険じゃないのか?」

錬金術師イルーシア「リスクは高いでしょうね。でも切り札としてなら大いに使えるわ」

ノルマン・チャールベルク伯爵「それでは家族を守るために使うわけには行かないな。護衛でも雇うべきか...」

近隣に巣くうカジートの山賊団の暴挙は、近年コロールの街中まで及んでいる。
いざという時に家族を守れる力が欲しい。そう思ったのは彼も同じだろう。



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大きな力というものはなんらかの代償を払うものだ。
わたしにはその覚悟はあるのだろうか?そんなことを考えていた。

夕刻。

ノルマン・チャールベルク伯爵「サーリア、君はコロールの出身だろう?新しい屋敷の建築に合わせてガードマンを雇うべきかと思ってるんだが、戦士ギルドに口利きに行ってもほしいのだ」

サーリア夫人「そうですか。分かりましたわ。戦士ギルドとは以前より多少の付き合いがあります。モドリン・オレインに腕の立つ戦士を斡旋してもらいましょう」

ノルマン・チャールベルク伯爵「そうしよう。それとリノン、おまえの教育の時間をもっと増やそうと思うけどいいね?



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少女リノン「もちろんですおとうさま。わたしお勉強がんばります」

ノルマンの英才教育は行き過ぎていた。娘を異様なまでに屋敷に閉じ込め、極度に行われる貴族教育。

いつしか私の娘は愛想笑い"以外"を忘れてしまった。
娘がそんな風に育ったのは原因の一環は、私が弱かったせいだろう。

翌日正午。

サーリア夫人「でもモドリン、彼はさすがに...」



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モドリン・オレイン「お前たち二人は"今は只の他人"それにこいつの腕はおまえだって知ってるだろう」

サーリア夫人「あなたは...それでいいの?ゾハル」

戦士ゾハル「ああ。金さえ払ってくれればそれでいい」

サーリア夫人「そう...なら正式にあなたにチャールベルグ家の護衛をお願いするわ」

ぶっきらぼうながら、護衛になることを承諾してくれたゾハル。
「金銭に固執する風」を演じるのは彼なりの優しさだということを私は知っている。

またこの街であなたと巡り合うことになるなんて、神は残酷だ。

あなたを忘れさせてくれない。



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第4節「傭兵ゾハル・マーベリック/記憶の海」


いつからだったろう。

気が付けばオレは深い、深い、暗い海の底に沈んでいた。



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青から群青...光も届かない深い、深い、暗闇の海へ。

記憶の残骸は少しづつ朽ち、やがて粉雪の様に溶けて無くなってしまうのだろうか。



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だが、暗い海の底まで差し込む一筋の光をオレは知っている。

遠い、遠い昔の記憶。





初めて会ったその少女は立ち振る舞い、仕草、笑い方まで、まるで作り物の様に〝完璧〝だった。
まっすぐで澄んだ瞳は、なにもかも見透かされてる様で息苦しかった。

少女リノン「おとうさま、わたし帝都の植物がいっぱいあるところにいってみたいです」

ノルマン・チャールベルク伯爵「そんな時間はないだろう。しっかり勉学に励みなさい。おまえは普通の子ではいけなんだよリノン。分かってくれるね」

少女リノン「...はい...おとうさま」



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少女の希望がバッサリ切り捨てられるのを見るのはこれで何度目だろう。
乾いた笑みで、言いつけを快く受け止める少女の気持ちを、なぜ誰も分かろうとしないのだろうか。

当たり前の感情すら許されないと言うのなら、
名家の生まれという肩書きは、動物に付ける首輪の様なものかも知れない。

護衛のゾハル「サーリア、あれじゃ...」

サーリア夫人「分かっているわ。私だって...もっと愛情を注ぎたいのよ。でも...あの人の意志に逆らうことはできない」

護衛のゾハル「相変わらず流されるままか。あいつの気持ちも考えてやれ」

サーリア夫人「あなたには...私の気持ちは分からないわ。あの時だって...」



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傭兵のゾハル「ああ、分かりたくもないね」

突き放したものの、サーリアの心情は全く分からないわけではなかった。
良くも悪くも貴族なりのルールの中で生きているのだろう。

そんな中、いつしか少女は普通の会話をできる相手すらいなくなったようだった。

少女リノン「ごえいのおじさん」

護衛のゾハル「なんだ?」

少女リノン「植物園もだめだった」

護衛のゾハル「そうか...残念だったな」

少女リノン「ううん、わたしがいい子じゃないからダメなの。ぜんぜんへいき」

またしても人形のような作り笑い。だがそれでも流れる涙を必死に堪える姿は子供そのものだった。

護衛のゾハル「おい、リノン」

少女リノン「なぁに?おじさん」

護衛のゾハル「知ってるか?ガキってもんは、悲しいときは笑わなくていいんだ」



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少女リノン「かなしくなんかないよ。わたし、が...わた..わたしが...」

護衛のゾハル「誰にも言わねぇ。心配するな」

後でサーリアから聞いた話によると、リノンは物心付いて以来、初めて大声で泣いたそうだ。

少女の泣き声は屋敷中に響き渡り、雇い主にこっぴどく絞られたのは言うまでもない。



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それからだった。リノンがオレの前で作り笑いをしなくなったのは。
いつのまにか遠慮なく悪態すら付くようになったが、それからリノンは以前よりずっと人間らしくなった。

少女リノン「おじさんおかえりっ!!ふふふ...きょうはおみやげなぁに?」



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護衛のゾハル「あのなあ...遊びに行ってるわけじゃないんだそ」

始めはよそよそしかった少女は今やすっかり懐いてしまった。
狭い箱庭の中で唯一本音を話せるのがオレだけだったというのもあるだろう。

始めは苦手だったまっすぐな瞳も、やがて悪くないと思うようになれた。
家族を失ってから、ずっとひとりで戦ってきた自分を、この少女に重ねていたのかも知れない。



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そしてある日、チャールベルグ家に激震が走った。リノンが乗馬訓練の最中に忽然と姿を消したらしい。

傭兵のゾハル「すぐに出る。コロール周辺ならオレの方が詳しいからな」

サーリア夫人「お願い...!!お願いッ、あの子を...!!」

傭兵のゾハル「当たり前だ。お前たちの娘は必ずオレが助ける」

サーリア夫人「違うの...あの子は...もしかしたら...」

傭兵のゾハル「今は時間が惜しい。すぐに戦士ギルドの協力を仰ごう。話はあとだ」

リノンを攫った山賊の足取りはすぐに掴めた。



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奴らの目的は金銭だけではなく、裕福なチャールベルグ家に対する報復。

貧困格差が激しいのはブラヴィルだけではない。職にありつけず山賊になるものも大勢いる。

ヴァイラヌス・ドントン「ゾハルさん...山賊とはいえ一人は」

傭兵のゾハル「窮地に陥った奴は何をしでかすか分からないからな。刺激したくない。15分で戻らなかったら突撃してくれ」

山賊A「チッツ...もう足取りがバレたのか...」

傭兵のゾハル「戦士ギルドを舐めて貰っちゃ困る」

山賊A「その瞳の色...てめぇがこいつの父親か?親父の前で娘の顔をズタズタに引き裂いてやるのも一興だが...」

傭兵のゾハル「金なら持ってきた。その娘を渡せ」

山賊B「俺たちが町の隅でどんな生活をしてるか知ってるかァ?大きなお屋敷でのうのうと暮らすおまえらに」

幼女リノン「ん~ッ!!んん~!!」

山賊A「おっと、武器をそこにおいてひざまづけ。少しでも抵抗したら分かってるなァ?ああん?」

ゴッツッ!!



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山賊B「オオラッ!!どうした色男、まだまだ行くぜッ!!こんなんじゃ収まらないんだよッツ!!」

調子に乗った山賊は一心不乱に鉄のメイスを叩き付けた。

系鎧は大した意味をなさず、骨が数本折れ、この後しばらく護衛の仕事を休む羽目になった。

幼女リノン「...ゃ...やめて!!もう死んじゃうよ!!...それにその人はおとうさまじゃ...!!」

傭兵のゾハル「ビービーうるせえガキだ。黙ってな」

少女リノン「なんでッ...そんなになってまで...」

傭兵のゾハル「...仕事だからな。それだけだ」

少女リノン「...それでもいい...こんどは...わたしがおじさんをまもるから...」



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ヴァイラヌス・ドントン「おい、いたぞ!!あっちだッ!!」

意識も薄れる寸前、待機させていたヴィラヌスたちが一斉に突撃して来た。後のことはもう心配ないだろう。



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慣れない取引のおかげであちこち複雑骨折をしたが、ガキの命を守れから上出来だ。

なんでそんなになってまでだって?

なにも不思議なことではない。家族を失い人間不信になっていたオレを信じ、
人間らしい感情を取り戻させてくれたのは他ならぬおまえひとりだから。

おまえがオレをこんな風に変えたんだ。

だがもうあの頃のようなオレでは無くなってしまった。たくさんの人々の命を奪った。




---あんたは"こっち側"の人間だろ?いくら真人間のフリしても所詮は人殺しなんだよ!ギャハハハハ!---



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そうだ。オレはすでに自分が手に掛けて来た数多の死体の上を歩いている。

そして母を殺し、力に溺れた悪党の血を引いている。



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オレはお前が抱いている英雄などではないんだリノン。

もはや失くすものすら、もうなにもない。そっと目を閉じようとした時だった。
海の底まで差し込んだ一点の光は、やがて見覚えのある少女の姿に変わり、こちらへ近づいて来る。

ありえないことだ。きっとここは死後の世界で幻覚なのかも知れない。



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リノン嬢「むぐぐぐぐ...」

その華奢な腕はしっかりオレの手を掴みグッと引き上げ、そのまま海面へと浮上した。
幻かと思ったのだが、その手は確かに暖かった。



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海岸まで泳ぐ途中で溺れかけたオレたちだったが、そのまま岸辺へ打ち上げられた.
危険を顧みず、精神世界へ救助に飛び込んだリノンに礼の一つでも言うべきだろうな。

傭兵のゾハル「...すまない。おまえがいなければ溺れ死んでいた」

リノン嬢「わたしは...おじさんがいないと息ができない。あなたがいたから飛び込むことができたの」



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傭兵のゾハル「オレのすべてを知ったのだろう。オレはおまえそれでもオレから離れないのか」

すると少しむせこんだ後、リノンは口を開いた。

リノン嬢「それでもいいの。おじさんは昔から何も変わらずわたしのヒーローだよ」

あの頃苦手だった、自分をみる少女の澄んだ眼差しは、今でも何一つ変わらなかった。
もう一度歩いてみようと思った。そして違う形で罪を償っていく。

傭兵のゾハル「ビービー泣いてたガキがいっちょ前になったもんだ」






リノン嬢「言ったでしょ?今度はわたしが---...」






to be continued.






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Comments 6

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敗残兵  

更新お疲れ様です。創作最優先で闇堕ち好きとはササーニア先生も人が悪いですねw
アンスラッパに指輪と来るとどうもあの人を思い出しますが…さて。
タラースや…アンスラッパにドン引きしてたお前はどこに行っちまったんだ…。
実は彼の「食と女に目が無い俗物だけど、悪人にはギリ届かない微妙に常識人」なところが好きだったりしますw
セミョーンの側近アルフレッドとかも。ホント奴隷港の人間はみなキャラが立っててイイですよね。

リノン嬢も年相応の女の子でありますけど、すごい逞しくなりましたね…
sasaさんの世界は色々あり過ぎて全て終わった頃に浮世離れした人にならないか心配ですが。
今回リノン嬢はおじさんの暗い一面を初めて知った訳ですが、おじさんがそういう苦しみを吐き出せそうな人物って殆どいない気もしますよね…
オレインみたいな戦友はちょっと違う気もしますし。でも前を向ける様になって良かったです。
守られてる者が守る強者の傷ついた心を救い、再起させる展開って良いですよね…。

今回はゲストがいっぱいですね、あの人の御先祖様やあの2人組や別の2人組も!
こういう小ネタ、見てて楽しいですねw「あの人じゃん!じゃああの人もいるかな?」と探してみたり。
激昂魔法のポーションっていうのもイイですね、この辺の感想は子孫の方wに譲る事としますが。

第3節、何気なく読んでて「えっ?」となって読み返したら…おじさん?どうなんですか?
真相がどうなのかは今後のお楽しみという訳ですが、また凄い気になる要素が入って来ましたね。
ところで…また腹立たしいのが出しゃばってますね、しかも今回は台詞付きというw
オマケにどちらもしれっとGriLkaさんの新作を着こんでいるという始末。オープリーズ。
邪悪に手を掴まれる前にリノン嬢の手がおじさんに届いて本当に良かったです。
これで本来寝てる人と違っておじさんも無事?に目を覚ませそう…ですよね?

今回もお疲れ様でした、奴隷港もあと少しでクライマックスですか。次も楽しみにしています。

2019/11/04 (Mon) 01:16 | EDIT | REPLY |   
sasa

Sasa.  

To 敗残兵さん

いつもながら熱いコメントありがとうございます。感涙(ノД`)・゜・。

>>アンスラッパに指輪と来るとどうもあの人
あの人とは別の奴隷の指なのですが、改めてみてみるとちょっと混乱しますね。
メタ的な話ですが、save dataのゴミなのか、ウチの環境だとなぜか指輪を外していても指輪が残るんですよ...

>>人が変わったタラース
人間の慣れというのは怖いですね...ということではなく、
これは私の人物設定が薄れていた結果ですね。お恥ずかしい...
まさかターラスをこんなに気に入ってくれるとは思っておらず、少し扱いが雑になってました。
これは猛反し、次回はターラスたくさん登場させるしかないですね( ゚Д゚)クワッ

>>おじさんの再起
持ちつ持たれつのビジョンは前からあったのですが、
憧れやカッコつけたいみたいな表面上の安い関係を乗り越えられたのかと思ってます。
リノンはホント成長しましたね。このまま熟年夫婦みたいになりそうです。

>>今回はゲストがいっぱい
これは気が付かないかと思ったんですが、結構バレてますねw
MPCで配布している方に限りますが、あの人やあの人やあの人も色々出てます。
チュルパン達に関してはカメオ出演の枠を飛び越えちゃってますけど...
揺らがない邪悪のキャラってのがホント好きで、ガチバトルやバックボーンまで描きたい衝動に襲われましたw

>>凄い気になる要素
これに触れるのはしばし先の話ですが...どうなることやらといった所です。

奴隷港編は後3話で完結予定です!引き続きお付き合いただけると嬉しいです

2019/11/04 (Mon) 21:39 | EDIT | REPLY |   

せんたくき  

緊迫感の凄い精神世界編、楽しく拝見しました~
リノン嬢の、ゾハルさんの、家族愛や憧憬や様々が綯い交ぜになった、歪でかつ切ない世界観が圧巻でした!

ササーニアさんと、セニョーン&&タラースのアンダーグラウンド王のやりとりの
ちょっとイカれた趣向が面白かったです。アンスラッパ;;

2019/11/05 (Tue) 18:11 | EDIT | REPLY |   
sasa

Sasa.  

To せんたくきさん

おォォォ...コメントありがとうございます!

今回は節仕立ての表現ではありますが、
それぞれがリンクしたら面白いなかなあと実験的な流れを組み込んでみました。
読みづらくなかったなら良いのですが...

私は個人的に、物凄く正しく、強い人間が無双する話は、あまり心を揺さぶられないんですよね。
ウチは欠陥人間ばかりなので、「歪」という表現はとてもしっくり来ました。

それとわたしはせんたくきさんみたいに、ダーティで詩的な表現を小文で描けるのに憧れているのですが...やっぱり色々書き込んじゃいますね。
語り過ぎない方が想像の余地があったりするのに自分で残念だなあと思ってますw

ササーニアとボスたちのやりとりはけっこうオブリっぽいイメージで行きました。最初は自分のつもりで描いてたのですが、もうキャラとして出来上がっちゃったので、もう自分の分身では無くなっちゃいましたね。

今後も粛々と描いていきますのでお付き合いいただけるとうれしいです!!

2019/11/05 (Tue) 18:54 | EDIT | REPLY |   

もきゅもきゅ  

No title

こんばんわ~!
撮影の合間に遊びに来ました!(読ませて頂いたのは公開直後でしたけど^^)

多くのシーンを使いながらも発散せずに纏まっていてすごいなぁ。そして前に見せて頂いたメリスのおばあさんまで出ていてびっくり。データ飛んだと聞いていたので無理かな~って思っちゃってました。sasaさんとその設定を詰めることで、こちらのおばあさまの近況とか遍歴とか、キャラのイメージの空白だった部分が肉付けされていくのを感じました。こうやってクロスオーバーさせたり相談したりするのはとても刺激になっていいですね(*´ω`*) …というか、構成とか編集とか本当はめっちゃ人と相談したかったりしますw

あ、そうそう。読んでビックリ。名前が公開されているじゃないですか…ササーニアって言うのか(´◉ω◉` )!
(魔道師ササ→魔道師ササーニア) うちの話しもそれに合わせて直しちゃいました。
物書きなら、今後ジャースに何か言及させてもいいなぁ、とかなんとか・・・

あと、お母様を私にくださいw

2019/11/16 (Sat) 17:37 | EDIT | REPLY |   
sasa

Sasa.  

To もきゅもきゅさん

もきゅさんいらっしゃいまし~(*´ω`*)

Twitterでコメント貰えるだけでも十分嬉しいんですけど、
こうやって本編にコメント頂けると、また別のうれしみがあります!

プロット敷いてると相談したくなりますよね~
今回は結構忘れちゃってたサブキャラ設定なんかもあったりで...

余談なのですが、私は勢いを付けるために、その話のイメージ的な曲を聴きまくったりしてますかね。今回はミスチルの深海やスキマスイッチのマリンスノウ、やなぎなぎさんのアクアテラリウムなんかを聴きまくってイメージ固めたり...

メリスおばあちゃまは奇跡的にベースのみ残していたセーブデータがあったので急遽復元しました!ホッと一息。バックアップ大事ですね。本編に登場させてようやくイメージががっちり固まりました。こうやって肉付けされてく瞬間はまるで子供を送り出すような気分になりますw

>あと、お母様を私にくださいw
CSのデータそのままお渡ししますので、おばあさまでオブリ始めませんか?(ぇ

2019/11/16 (Sat) 20:20 | EDIT | REPLY |   

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